詩の日めくり 二〇一八年十二月一日─三十一日/田中宏輔
右腕のあったはずの場所を見た。
血まみれの肉の間から骨が見えていた。
痛みはなかった。
目の前に影が立ちふさがった。
見上げるとよく知っている顔があった。
彼は微笑んでいた。
直感で、微笑みにいっさいの嘘がないことがわかった。
トマス・M・ディッシュだった。
写真で見たとおりのマッチョなハゲだった。
両腕には派手な刺青が施されていた。
「わたしが来た。」
ぼくには、彼の言葉がわかった。
英語は、あまりできなかったはずだけれど。
すると、ディッシュは口を開けて笑った。
そうだ、さっき、ディッシュは口を閉じてしゃべっていたのだ。
「すまなかった
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