詩の日めくり 二〇一八年十二月一日─三十一日/田中宏輔
 

大きな橋の下
テムズ川という名前が思い浮かんだのだけれど
テムズ川というのは、じっさいには知らないのだけれど
その暗い水の上に浮かんだ小さな船のなか。
洗濯物を干している弟たちに出会ったのだった。
ぼくは走り寄って
まだ幼い一番下の弟の頭をかき抱いて
泣いたのだ。
声を上げて、ぼくは泣いたのだ。
すぐ下の弟も子供だった。
すぐ下の弟は、洗濯物を干したあと、身体を拭いていた。
船には、風呂がなかったのだ。
ぼくは父親と継母が許せない。
まともな死に方はして欲しくない。
父親は盲目で、度重なる癌で苦しんで死んだから、もういい。
こんどは、
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