遠いひと/佐々宝砂
 
面に黒髪が広がり
少女は そのまま沈んでしまいたいと思う

けれど少女の肺は
酸素を欲しがって悲鳴をあげる
少女は空を見上げ 乱暴に目元を拭う

それから少女は川岸で じっと待っている
枯れて腐った水草のあいだから
濡れそぼった頭が浮き上がるのを



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指環と数珠がいくつも沈んでいる
 白く波立つ地下水道を
  一艘の舟が下ってくる
   少女が乗ると舟は静かに滑り出す

満ちた月の輝く洞窟で
 子どもたちが祈りを捧げている
  闇から闇へ滝が流れ落ちる
   縄に括られた女が滝壺に身を投げる


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