寒くなると物忘れがひどい/ただのみきや
 

鼓膜の裏側でナノサイズの塵が渦巻くような
那由多の微生物その目まぐるしい生と死の
さざめく霊魂のコラールのような
だが時折にわかにそれが飽和し収束する一瞬がある
ボリュームツマミを素早く回しすぐ戻すような
意識が飛ぶ寸前の行きつ戻りつの心地よさにも似た
―――言いたいことは一つ
わたしはオノマトペより直喩が好きだ





言葉立国の幸福指数

言葉を鵜呑みにする 一切疑わない
成分など詳しく知らなくても
子どもの頃から飲んでいる感冒薬みたいに
隠された意図なんて考えなくていい
字義通りの辞書の通り
名は体を表す そんな世界
「偽り」という言葉
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