希望だったけれど叶わなくてもよかった/ホロウ・シカエルボク
 
ないのか、そう訴えてでもいるように舌がだらんと伸びていた、それは極めて個人的に俺に向けられた示唆のようにも見えた、でもそれは俺の感じ方ひとつだ、そして俺はとてもそんなことを丁寧に考えられるような状態ではなかった、だからそれはなんだかんだで結局、ただの犬の死体であるというところに落ち着いた、すれ違った太った若い女が、まるできちがいを見るような目で俺のことを見た、人間はどこまで脂肪をため込むことが出来るのか、そんな実験に使用された挙句用済みになって放り出された、その女の異様な太り具合は俺にそんな妄想を思い起こさせた、願わくばあの女が、あの厳しい目を少しでも自分自身の身体に向けることが出来たらいいね、そ
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