詩の日めくり 二〇一八年九月一日─三十一日/田中宏輔
 
書けるのですが、ぼくにはまっとうな文章が書けません。20代はじめ、さいしょは小説家を目指していたのですが、小説は書くのだけでも一作に数年かかることがわかり、また、ぼくの書くものは詩だという友人の忠告に従い、やめました。もう少し正確に書きますなら、ぼくの原稿を見た友人が、ぼくの手を引っ張るようにして書店に連れて行き、ユリイカの投稿欄を開いて、「ここに投稿しろ。」と言ったのがきっかけで、詩を書くことにしたのでした。そのときには、ぼくはもう27、8歳になっていました。もう30年もむかしのことです。その友人自身は小説を書いていました。いま舞台関係の仕事をしています。彼が年上でした。憎たらしい言い方で、小説
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