素体回帰/ただのみきや
 
った
結実を避けて液化する狂気
水槽から飛びだしたひとつの時間
床で跳ねまわるつがいの眼球よ
天然なる都霧の中で愛し合う狩人たちよ
猫が咥えて持ち去った時間
開けっ放しの裏口にしがみ付いた匂い
だが記憶はとけるリズミカルに雑事の中へ
毬棘毬棘蝶々結びの心臓よ
愛は片端になること半分失くして完全になることだ
花は現象か現か幻か枯れて萎れる物質が花か
印象として永久に燃えて揺らぐものが花か
眠りから剥離した日常の内壁を徘徊する男
忘却をつかみそこねて溺れる芝居を繰り返す掌の波紋
緯度と経度に刺し貫かれて花嫁が風に鳴っている
吊られた素体は無数の意図と絡み合い
見えても見
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