詩の日めくり 二〇一八年六月一日─三十一日/田中宏輔
タージョン『めぐりあい』川村哲郎訳
二〇一八年六月十三日 「断章」
──と、だしぬけに誰かがぼくの太腿の上に手を置いた。ぼくは跳び上がるほど驚いたが、跳び上がる前にいったい誰の手だろう、ひょっとするとリーラ座の時のように女の人が手を出したのだろうかと思ってちらっと見ると、これがなんともばかでかい手だった。(あれが女性のものなら、映画女優か映画スターで、巨大な肉体を誇りにしている女性のものにちがいなかった)。さらに上のほうへ眼を移すと、その手は毛むくじゃらの太い腕につづいていた。ぼくの太腿に毛むくじゃらの手を置いたのは、ばかでかい体?の老人だったが、なぜ老人がぼくの太腿に手を置い
[次のページ]
戻る 編 削 Point(11)