たもつ家のほうへ ? たもつさんの詩の印象 2 ?/佐々宝砂
 
58)に登場するような、一見して危機感たっぷりの亀裂ではない。もっと微妙なズレだ。そのズレは、奇妙に意外性のある姿……ラッコ(「教訓」)や牛(「一杯の牛乳のために」)やキリン(「きりんタクシー」)、象(「象の夢」)のような動物の姿でもってあらわれる。その登場の仕方は、高階杞一の詩におけるキリンや、村上春樹の小説における象・アリクイと似ている。しかし、たもつさんの詩における動物は、高階杞一のキリンや村上春樹のアリクイに比べると、やや危険な存在であるように思われる。

> おかげで家電製品を手放した
> 車を手放し、家を手放し
> あんなに怒っていた妻を手放し
> あ
[次のページ]
戻る   Point(6)