詩の日めくり 二〇一八年一月一日─三十一日/田中宏輔
 
んだシンちゃんの感想は、「これはオレじゃない。」だった。詩論の核になった。『マールボロ。』は、ぼくの詩論の出発点になった作品だった。抽出する思い出の選択の違いや、その思い出たちの順番を替えただけで、別の人間になるんだね。何人ものぼく、何人ものきみがいるってことだね。いくつもの作品が同時に仕上がるってこと。『順列 並べ替え詩。3×2×1』のようにね。いや、違う。違う、違う。それは、作品上のことだけで、人生そのものは、時間の順番も、場所の順番も、出来事の順番も一つしかない、一回きり、一度きりの、ただ一つのものだったね。そう。人生と作品は区別しなきゃいけないね。あれ? それとも区別できないものなのかな。
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