三途川/田中修子
い生活の中で、目の中に輝いた世界を持っていたひとはどこかに行ってしまいました。笑ったり泣いたり、ふらふら歩いている。誰かが何を話しかけても、言葉は返ってくることもあったけれど、それは言葉ではなかった。目の前にいるのに、遠い、とても不思議です。
きっとあの、燦然と輝く世界の中に、母はわたしをおいて、行ってしまったのかもしれませんね。
おめえがいるからおかしくなったんだ、と父に、祖父に犯されました。
家の中はもうめちゃくちゃでした。
祖母が人買いに話をつけて、わたしを売りました。お金になり、母の薬に食べ物になればいいと思いました、母はもう、人が振り返るほど痩せこけていて、目ばかりが
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