三途川/田中修子
「ほんとうは産ませたくなどなかった。子堕しの婆に引きずり出してもらってよかった」
「母さんさえ許してくれるなら、俺はお前を殺すのに」
そういったことに気付くと、母はわたしをかばいました。 --かばってくれた、わたしはそれが嬉しかった。
だからわたしはもっともっと、祖父母に父に兄に、殴られるように、わたしを演じていきました。そうして母に抱きしめられ、熱い涙をひらひらと落されるのが、わたしにはほんとうに至福の時間であったのです。
そのうちに時間がたち、父は醜いわたしの容姿に母を犯した男を重ねたのでしょう、酒に溺れて行きました。
そうしてわたしが五の秋、十七の兄はわたしを犯しまし
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