三途川/田中修子
 
よ、その赤子は、何か人と違う、めずらしい運命をたどる存在になるだろう、あたしは人魚の肉をくろうて死ねずにさまよっているが、そんな目をした赤子をみるのははじめてだよ」
母がぼろぼろと泣いたのを覚えています。
 乳房から滴り落ちる豊かな乳のようにあとからあとから耐えず滴り落ちる澄んだ涙。
 わたしはめずらしい運命をたどる存在になろう。

 わたしは両方の祖父母と父、そして兄に折檻されていました。あかんぼうの頃から、母のいない場所で言われ、時につねられ、もう少し体が大きくなると、打ちのめされ。
「顔も見せないで疾風のように母の片方の乳を刈り取っていった狂人のかおが、お前には現れている」

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