三途川/田中修子
 
んな風に思ってくれるのは、優しくしてくれるのは、母だけでした。あたりまえのことです。

 そんな母にあかるい先を告げたものがいました。母が、あれはわたしと心中しようとしていたのかもしれません。
 「あなたは私のほかにだれにも可愛がってもらえないね、赤子なのにもう人の目のなかをよまなければいけないのだね、ごめんねぇ、ごめんねぇ」
 静かに母はそんな言葉を繰り返しておりました。
 おぶられて、いつまでもいつまでも歩いていて、ずいぶん遠くの海にきたと思ったとき、魚のような顔をして襤褸をまとった醜い老婆と浜でとおりすがります。すれちがうとき老婆がつぶやいたのです。
「あんた早まるんじゃないよ、
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