三途川/田中修子
ら血と精液をしたたらせて気絶している母を見て、ぼうとしながらなにかしらを叫んでいました。それを聞いてまわりのものが蟻のようにわらわらと集まってきて町医が呼ばれました。
わたしはその様子を腹の中からじっと伺っておりました。
母は最初に後頭部を殴られ意識を失いましたから、下手人はいまだに上がっておりません、なぜ母にそんなことをしようと思ったのか? 誰にも分からない、いえ、わたしは少し分かるような気がするのですが。何しろ、わたしの中の半分の血は、その残酷で猟奇な男のものなのですから。
わたしを孕んだのをまわりが知ったとき、まわりのものはおろせと当然言いました。
母は、失った乳房
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