三途川/田中修子
 
犯されて生まれた赤ん坊、それがわたしなのですから。

 裏店住まいの娘にしては賢く、美しい人でもあり、町の男衆にもてはやされたのではないでしょうか。そうしておごり高ぶることもなく、ただ、梅の花のように凛として生きてきたのでしょう。
 そして蝶は十六の時、おおらかで誰からも好かれる、いずれは大工の棟梁になるであろう人に嫁ぎました。つましいながらもよろこばしい祝言を挙げ、すぐに男の子も生まれました。心根の優しい娘がたどる、しあわせの道ともいえましょう。

 その男の子が、もう手も離れようという十二になったとき、蝶は男に犯されました。
 かけつけた父は、乳房の片方を鎌で切り取られ、局部から血
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