三途川/田中修子
たしはただお祈りしているだけでした。
あとには血も死骸もさっぱり片付いた部屋があります。
「いままでどおりでよい」
楼主に似た澱の混ざった声で、鬼はわたしに告げました。わたしはぺこりと、お辞儀をしました。
でも、そのとき、わたしは兄と一緒に死んだのかもしれないと思います。ときたま腹の下の方が切れない刃物で擦ったようにちりちりいたしますし、以前のお客様がたは、ぱったりいらっしゃらなくなりました。
お寺の方はいらっしゃいますが、どこか遠くを指さして、何かをおっしゃるばかりです。
成仏せよとおっしゃっているのかもしれません。でも、わたしは生まれた方がおかしいわたしなのです。
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