三途川/田中修子
 
乳房とおまえの乳房は同じ形をしているなァ」
 そうか、これが、わたしの父か。
 その時私は、お客様に頂いた、西洋の貴婦人がもつという、手のひらに収まる小刀を持っていました。
 兄の首を切って、さあっと襖に血が飛びました。飛んで飛んで少し驚くほどの血だまりになり、兄はその中に沈んでいます。

 あら、これでわたしも、磔かしら。それとも楼主が、うまくやってくれるのかしら。そんなことをぼんやりと思っておりました。
 しばらくしてすうっとふすまを開けてやってきたのは、絵草紙でしか見たことのない、鬼でした。すこし楼主に顔が似ているようにも思います。兄を頭からばりばりと食っていきます。
 わたし
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