三途川/田中修子
たしを花の蜜のようだともうします。ただ、毒が混じっていると、にがわらいしながらポツリと漏らしたこともあります。
蝶がわたしを育てたのだもの、花の蜜なのは当然だとも言えましょう。
蝶の片羽根を千切った男の血が流れているのですもの、毒が混ざっているのも当然だと言えましょう。
わたしの傷を愛する人は、みな、同じようなやさしいひとばかりです。
わたしは、それで、わたしの傷をあいします。
傷を作った日にだけよんでくれとおっしゃるお客様が多いので、そんな日は店に使いをやらせます。朝から晩までお相手を務めさせていただきます。
お寺のお方もよくいらっしゃいます。わたしはそのかたのも
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