三途川/田中修子
 
坊だった頃によく受けたけがらわしいものをみる目ではありませんでした。少し、哀しみの混じっているような、良く見ると底に不可思議な緑の澱りがある目でありました。

 兄は昔したように自分のものをいじりました。そしてわたしの顔に白いものをかけました。わたしはそれをなめました。
 兄は、奇妙なところで白痴でした。油の浮いて日焼けして、太って口はいつも空いておりました。
 わたしが中に入れますかとたずねましたら、急におびえた顔をしました。
 なぜ、泣かないのだ、と申しました。
 それはもうわたしはいろいろなことを習いましたから、と申しますと、兄はしくしくと泣きはじめました。
 泣きながら、右手
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