三途川/田中修子
はしておりますまい。いえ、それもわたしのまいた種なのです、わたしさえ生まれなければ、兄もきっと普通の道を歩んでいたことでしょうから。
わたしのお勤めしている店は遊郭の盛りからは離れておりましたけれども、値は張っておりました。どこそこの旦那様が、ひとづてに伝えてしか入れないような店で、その前で金をばらまいて、妹を買わせろと、泣き叫んでおりました。
どうするかと尋ねてくる楼主に、
「確かに兄です、お金さえ取れるのならば、お相手させていただきます、よく取り計らってくださいましな」
「お前らしいがな、しかし」
「可哀想な人ですから」
楼主は、奇妙な目でわたしを見ました、それは昔赤ん坊だ
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