第十巻七十二番/板谷みきょう
 
ていたのに
起こしてしまって御免ね。」と言って
就床を勧めた

なのに
彼女は1時間もしないうちに覚醒し
ふらふらになりながら
掠れた声で各病室に入り
寝ている患者を揺り起こし始めた

当直医に状況を報告したが
これ以上は薬は使えないから
保護室に入れるように指示が出されたが
急性期の症状の患者で
保護室の空きは無い
医師は
眠た気げな声で
「じゃぁ、板谷君が詰所で看てて。」
と電話を切った

彼女を詰所の処置台に座らせ
時には横にしながら
怯えるて話す地球滅亡の話を聞き
「逃げなきゃ!」と衝動的な行動を制止し
明け方まで
月が流れた雲に隠れたから
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