第十巻七十二番/板谷みきょう
た
暑い夜だった
しかし
その十五分後に女子病棟から
「逃げて―!助けてー!」の
叫び声が響き渡った
覚醒した患者たちが
詰所前のデイルームに集まり始め
「板谷さん。佐々木さん
状態悪いわ。おかしいよ。」と
訴え始めた
再び夜勤の当直医に電話をしたが
医師は
「じゃあ。注射して。」と
強い抗不安剤の筋肉注射と
強い鎮静効果の静脈注射の
指示を出すだけで
病棟で診察する気は
無いようだった
言われた通りに
彼女に処置をして
ぐったりと寝た彼女を抱え
集まっていた他患には
「先生の指示で注射したから
落ち着くと思うけど
折角、寝てい
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