詩の日めくり 二〇一七年十一月一日─三十一日/田中宏輔
々しくして
怖くなって叫ぼうとしたら
声が出なくて
で、ぼくの身体も上向きから
その女に背中を向ける格好にぐいぐいとゆっくり押されていって
でも手は触れられていなくて
背中が何かの力で均等に押されて横になっていって
これから先は、どんな目に遭うのかと思ったら
手の先だけは動かせて
手元にあった電灯のリモコンを握って
スウィッチを押して明かりをつると
死んだ女の気配がなくなった。
死んだ女は、ぼくの母親でもなく
若い女だった。
知らない女で
顔もわからず、ただ若いことだけがわかった。
実体がある感じが生々しくて気持ち悪かった。
24
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)