詩の日めくり 二〇一七年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
う話をした青年には、ぼくのほうからこんなことを尋ねた。
「なにがいちばん怖いと思う?」
即座に、「人間。」という返事。
彼もまた、人好きのする好青年なのだけれど。
「ぼくも生きている人間がいちばん怖い。」
でも、なんで?
「嘘をつくでしょう。」

たしかに、自分自身をだますことも平気だものね。
でも、ぼくだって、嘘をつくことよりもひどいことを
平気ですることもあるんだよ。

なにかが間違っているのか
どこかが間違っているのか
いや、間違っているのじゃなくて
パズルのピースが合わないというのか
そんな感じがする。
ぴったり収まるパズルが
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