詩の歌声/ただのみきや
じゃなくジャンキー
きれいごとも吐露もすべて
微細な電流の呼び起こす
陶酔への生贄
目の横でゆれていた芒(すすき)
見定めれば
まだ青々とした別の草ではなかったか
いま見ている空は本物だが
空と書けばもう小道具
せいぜい美しく仕上げたい
油絵のように厚ぼったく
濁った空へ落ちて行け
初恋神話
二人はしゃがんで向かい合った
少年が両手で掬った水を零さないように差し出すと
そっと唇をつけて少女は一匹の赤い金魚を吐きだした
金魚はゆらめきながらインクのように溶け
あとには澄んだ水だけが残った
少年は目を瞑り一息にそれを飲みほした
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