だいぶダイブ / ある女の子篇/末下りょう
 
いた。
蠢くアナーキーを聴いた。


舌を突きだして拳をかざして激しくぶつかり合うオーディエンスを掻き分けてわたし、光と爆音と肉体の渦を必死で切り抜けた。


もみくちゃになって最前列の手すりを掴むと、ステージを見上げた。


その夜、わたしは決意を胸にきてた。それは熱狂で、誰よりも先にステージに這い上がって、そっから人生初のダイブを、誰よりもアクロバティックに決める決意を胸に。きてた。


生まれて初めてのダイブを


セキュリティーの目を盗んで、腰の高さくらいのバリケードフェンスに足を掛けると、想像してたより簡単にステージによじ登れた。
何人かのキッズがわたし
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