玉手箱/ただのみきや
眼孔すらとうに失くした鈍色の視線があった
祭具のような硬い孤独を相続するために
遡る血がいつのまにか清水となって一枚の
死者の面影をくゆらせる青葉の影の乳房に
這い登ろうとする小さな爪がはらはら舞った
鳥は縫う問い返す間も与えずに
窪みの水は裂けた静かに乳飲み子の微笑みのように
甲羅を剥がされた魂はもぬけの殻
滓の匂いを懐かしむ自分の尻尾を追うように
潰えた声を宿す顔から零れ落ちるフナムシ
静けさは粒立ちながら広がって潮騒をも食んだ
打ち上げられた浦島は若い頃と同じ姿 きみは
虚空の銅鑼を鳴らすには非力すぎる筆に朱を宿す
全て空洞を宿すものには静かな違
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