玉手箱/ただのみきや
 
な違和がある
時間に対流と淀みが生じ木霊はずれながら巡り続け
蜃気楼が元型的死者たちを飾り踏む影を暗喩めかせる
だがやがて空ろは空ろへと還り百鬼夜行は煙と化す

きみの真新しいパンツスーツから線香の匂い
わたしの情欲を投影した瑞々しい肉体が
いま細切れの言葉となって散らばっている
人気のない海が突然唖になった俳優のように叫ぶ

浦島と乙姫に乖離したまま
割れた符号がいつまでも半分ずれたまま
きみは真っすぐ歩いてゆく
そのために必要な護符を自ら書き続けて



                   《2021年9月4日》









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