詩/パワフルぽっぽ
 
った。それはひどく真っ暗で、太陽の光がぜんぜん入らないくらいの深さの場所だった。海底にはスーパーで売っているような魚介類はまったく見当たらず、ときおり透明な甲殻類がチラチラと歩いていた。それは、この世界で最高にまっくらな景色だった。夢のなかではちゃんと指かきとエラと尻尾がついていて、人間だった時と同じようにスイスイと海を泳ぐことができた。小学生のころ、水泳のオリンピック選手の候補生だったときを思い出して、まだこうやって泳げるんだから身体の記憶力はすごいなと思った。たぶん、わたしが忘れてしまっていることも身体は細かく覚えているんだろう。毎朝決まった時間に開けた花柄模様のカーテン、ちょうどよい茹で具合
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