化生の夏/ただのみきや
 
土に還らず

木洩れ日のゆりかごに
干乾びた夢ひとつ
蟻に運ばれることもなく
ペン先でつついても
カサコソ鳴るだけの

蝉よりも見劣りする
透けた単純構造から
ふと零れる輝き
  ――腐った雨水





蜜薬

夢を見た
雨音を聞く魚のように
微笑みは組み敷かれ綴り紐をほどき
祈りたちは脱獄し差し向かい死と語る
酒と独白に潤った
叶うよりも愛おしい密約の 頬を食む
吐息 ああ
夢は見た
自らの抜け殻と邂逅する蝉の戸惑いの弧
自らの味を知らない果実の淫らな子午線
まだらな愚行に尺取られた美粧による眩惑を
悔みを捧げながら吸われ
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