左目 この世の果て/木立 悟
 






夜明けに立つけだものが
空を掴んでは離している
虹の足音
虹の足音


月は森に居て
径は光に流され
まぶたは眠り
さらに 昇る


何もない昼の空
風の音
水に近づく



鐘が
鐘を鳴らしている
氷は
虹と緑にまたたく


触れた水の
反対側に目をひたし
見つめるのは街
雨の雨の雨の街


海と川のはざまに立つ
白く歪んだ双つの建物
水紋の群れを渡る鳥
増えつづけ 去りつづける


左目 
中指
さらに昇る
さらに昇る 痛みと虹


四つめの腕
六つめの指
両膝と胃を結ぶ三角から
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