オリンピックとコロナとわたし/ただのみきや
まえは同じ場所に立っているただ老いが進む
乾くために飲むおまえは楽園の終身刑を言い渡された
魂の独房で蛇に飲まれかけている金糸雀の羽ばたき歌
声の代わりに知恵の実を用いてもはや欲望を情熱とは
呼べなくなった自意識を腐らせながら自らの生をもっ
てなにかを表現しようとひたすら渦の中心へ一つの虚
点へネジ釘のようにギリギリと等価には名付け切れず
展開された言葉の群れが追い囲んだ形のない空白の肌
に触れた心酔の粒だった泡立ちの中で一瞬にして面差
しまでもが消失し氷の裸体を求めグラスの海をさまよ
っている乾くために飲む消耗こそ生の進行形で鑿(のみ)を入
れるのは残すためではなく跡
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