オリンピックとコロナとわたし/ただのみきや
でなければ厚みのない紙の上
どこまでも奥行きを描ける人
比喩ではなく
絶えず揺れ動く世界
わたしもまた覗いている
高慢な王様のように
イルカが跳ねた午後
焼け焦げた網膜に
仏壇みたいな冷蔵庫が倒れて来る
着くずれた浴衣の女がひとり
中空に鳴っていた
わたしの目と彼らの指に
大気はしつこくくすぐられ
こらえ切れずにこぼす鈴
青い青い窒息の高揚感
うつせみ
おまえの思考の絡まりが黄ばんだ狂気のまま調理され
白い皿の上で吐瀉物を装う時そこにカタルシスはない
解き放たれた蝶は一瞬にして燃え上り微かな灰とガス
になるおまえ
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