おまえがアーメンとは言えないものを/ただのみきや
 
Yはそれを何粒も食べて幻の中
母親に抱かれて乳房を吸っている
Yの半生は予行練習のまま
紙の墓石の間ある
誰かの勝手な殴り書きになった


その女はアルコール依存症で
酒が切れるとうまくページが捲れなかった
それでも女はいつも図書館にいて
いつも同じ席で本を開いていたし
時折バッグから小さな酒瓶を出して飲んでもいた
女の足元ではよく鰐が昼寝をしていた
踵に踏まれてもまったく気にはしなかった
梔子の花をひとつ摘んで食べてみる
(口無し…… 朽ち無し…… クチナシ…… )
なぜ図書館に通うのか
女にも解らなかった
惰性から依存症へ
図書館は恋のような裏切りだった
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