おまえがアーメンとは言えないものを/ただのみきや
た
女は左目を取って一冊の本に挟む
――雑貨屋のセールで太陽が小麦粉をまき散らす
アーモンドにダイアモンドにクルミにコルク抜き
ひどい電磁波の嵐でみんな泡を吹いて――
眼孔は夜
マンドリンとファドの歌声
下着の中で蜂が死んでいる
閉館開けの図書館で少女の死体が発見された
少女の胃からはゆでたまごと未消化の詩が発見された
犯人は図書館そのものだと主張して館長は首を括り
司書たちはみな本の中に身を潜めたが
梔子鰐だけが変わらず悠々と本棚の森を散歩していた
( Water )
鰐の鼻先で羽根を休めていた黒い蝶が飛び立った
太陽が絶叫し
脳が笑い出す
誰かの遠投した瞬間の缶詰が命中して飽和した
くずおれる世界から
瑠璃色に閃き返すもの
虹色の原罪
《2021年8月1日》
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