おまえがアーメンとは言えないものを/ただのみきや
 
い声がする
( よ回帰せよ回帰せよ回帰せ )


鰐にからみついた蜘蛛の巣をていねいに取りのぞく
清掃夫の背後に 一人の少女が近づいて来る
少女の黒い靴下は片方なくすでに鰐のものだ
少女は清掃夫の首をそっと真綿で絞め始める
それはゆっくりとだが確実に酸欠をもたらし
清掃夫は朦朧と白い世界をさまよっていた
結晶したウユニ塩湖
かねてからの憧れの場所
気がつくと清掃夫の前にも後ろにも首のない死体が
延々と続いて行進していた
清掃夫はそっと自分の頭に触れて確認してみた
(大丈夫まだついている)
死者と共に行進すれば行きつくところは知れている
塩の上を行く一直線の行列から
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