おまえがアーメンとは言えないものを/ただのみきや
何年も本の森をさまよっていた
ある日通りかかった梔子鰐(くちなしわに)の頭の上に一通の
手紙があるのに気付いてこっそり拾って読んだ
するとそれはX宛ての恋文で
想いは切々と三十一音で歌われていた
Xは自分がガラス瓶で
冷たい体液が下方へ溜まって行くのを感じた
それは死んだ母親からの手紙であり
母の自分に対する愛欲の赤裸々な訴えだった
太陽の銀をした蛇が脳膜を滑る
(自分とは何か)振り向いた途端
Xは塩の柱になった
だが本当は塩の壺を骨壺みたいに愛撫する
一人の老年になっていた
老人は記憶を擦る
ロト6を擦るように毎日毎日擦っている
ヘリコプターの笑い声
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