おまえがアーメンとは言えないものを/ただのみきや
そんな学生たちは本棚の陰や本の中で活字に化けて
むつみ合い沢山の紙魚を生み落とした
すでに文字の数と紙魚の数は拮抗し
中には文字に擬態した紙魚ばかりの本もあった
内容は変わらないのに読む者の心に感応して
紙魚たちは身をよじり暗黙を膨らませる
「紙魚の仕業なのに記憶の誤謬だと勘違いする人もいます」
笑った司書の眼からはゴキブリ大の紙魚がこぼれていた
性が未分のままズッキーニのように成長したXは
真っ赤な鳩の卵をひとつ割ってコクっと飲んだ
瑞々しい歴史の睦言に頭皮の毛穴も開く思いがした
だが芽吹いたばかりの破壊衝動が実を結ぶには
まだまだ時間を要していた
Xは何年
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