おまえがアーメンとは言えないものを/ただのみきや
鰐の背には梔子(くちなし)が植えられていた
清楚だがあまりに甘く供養には不向きだと言いながら
通い詰める老人たちは合掌する時いつも
掌の汗に淫靡な電流を感じていた
時には意識下の欲求がたけのこみたいに突き出して
捻じれながらのたうって本棚を倒すこともあった
それでもなお老人たちは体裁をつくろい
新聞の中からある種のたくらみを読み出して
顔の皺をいっそう深くした
そんな彼らの足元を梔子鰐はゆっくりと散歩するのだ
勉強以外の理由でたむろしている学生もいた
特にある種の文学には依存性があって
周囲に退廃的なガスを発散し
多くの学生が詩人や小説家の夢に浸っていた
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