とはいえ瞬く間に喉は渇きを覚えるだろう/ホロウ・シカエルボク
な事実はなかったというように整然と片付いている、誰かが手入れを続けているのだ、けれど、建物に染み付いた記憶はそう簡単に消えることはない、俺はそんな出来事を知る前から、ここにはなにかまともじゃないものがあると感じていた、無人の存在と言えばわかるだろうか?それは場に焼き付けられた絶対的な現象だ、そういう種類の存在というものがこの世界には確かに見受けられるのだ、なにも、ここだけに限られた話ではない、居住者の居なくなった建物が妙に心を引き付けるのは、そいつが持っている記憶が寝言のように終始垂れ流されるようになるからだ、壊されるでも売りに出されるでもなく、ただひっそりと佇んでいるものたち、もしも彼らが口をき
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