越境者/ただのみきや
 
還りつく
抑揚のない時間
結ぼれたまま膨らんだ
ひとつの宇宙が
開花する
ひとつの墓が
永久を装う泡沫が
笑うように弾けて
なみだひとつ
大河にのまれ
咲くことで
死に
愛撫され
風のような虫のような
眼差しの囁きに
犯されて
淡くほつれた
蛭子の夢は
白く捲れる
昼夜の果てへ
花よ花
忘却の記号に映る
影のゆらめき





越境者

小さな蛾が迷い込む
悪さもしないかと放っておいたが
灯りを消して動画など見ていると
いい場面のいい場所に張り付いて
どうにも気になって仕様がない
シジミチョウより小さなやつだ
地味で 控
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