暗い道/佐々宝砂
でも寒い。
さむいさむいさむいさむい。
暗い空に、
群青の山のシルエットが浮かびあがる。
青い光が
山より大きい異様な入道の姿を浮かびあがらせる。
でもこの光も地を照らさない。
続いて現れる夜空の半分を埋め尽くす女頭の蛇、
螺旋を描くその胴体に刻まれた紋様は唐草。
手が冷たい。
自分の息を吐きかける。
すこしもあたたかくない。
おんなへびはきらいだ、
あいつの舌はつめたいし、
息はなまぐさい。
群青の山の背後にまた光が射す。
今度の光は炎の舌のように不安定に揺らぎ、
光に照らされた入道は
おろおろと姿を山のうしろに隠し、
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