すすき野原で見た狐/板谷みきょう
それは、人一人の願い事に過ぎないだろう。そのことに気付いてみれば、解ることだ。さあ、手をつないで、お互いにみんなの力を信じよう。それぞれが、それぞれに。今、願うことの有り難みを感謝しよう。」
そう言うと、与一は老若男女にかかわらず、歩いている者や、野良の最中の村人の手を握りました。
それが又、与一の変わり者の噂をより一層、際立たせたのでした。
見兼ねた村人が、小さな仕事を見付けて、働くことを勧めても、耳を貸すこともなく、いつまで経っても一向に、気にする風でもありませんでした。
すすき野原では、日が沈みかけると、すすき野原一面が真っ赤に染まり、風がすすきの穂を揺らすさまは、まるで燃え
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