すすき野原で見た狐/板谷みきょう
燃えている様でした。
そこには、狐が一匹住んでおりました。
村人を化かしたり、騙したりした事の無い、化けることが出来ない狐でありました。
「『狐ハ、人ヲ騙シ、化カスモノ』と決めつけたのは誰で、ござっしゃろう……。」
狐は、毎晩、毎晩、月明かりの下で、汗まみれになりながら、尚、化けきれぬ己れを悔やんでおりました。
そして、己れの力のなさに、いつしか頭の中には、悔やしさや情けなさやあきらめの気持ちが満ち溢れ、その想いが、声となって、渦巻いていたのでありました。
与一は、いつものように、村の家々を訪ね歩いていました。
珍しく帰りが遅くなった月の、まことに明るい晩、ついでに、
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