すすき野原で見た狐/板谷みきょう
に、野山を歩き回って、すすき野原を通り過ぎようとしたその時です。
すすき野原の中で、木の葉を頭に乗せて、クルクルリと宙返りをして化けている一匹の狐を見掛けました。
「おやっ、こんなところで狐の化けるところが見られるなんて、珍しいことだ。どうれ、しばらく見物させてもらうか。」
気付かれないように覗いていると、どうやら木の葉を一枚一枚、頭に乗せ変えては後ろ回りや前回りをしているのです。
人間に化けようとしているようなのですが、それは、それは、ひどい有り様でした。
何故かって、どれひとつとして満足な人間の姿に、化けられてはいなかったのですもの。
尻尾が残っているばかりか、髭がそのまま
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