すすき野原で見た狐/板谷みきょう
ままだったり、耳が化け残っていたりしているのですもの……。
狐は、明るい月に照らされながら、そして天高く雲が微かにたなびき、凍える様な冷たい風が吹き始めても、止めようともしないで、汗と泥にまみれながら、木の葉を変えては、一生懸命に、クルリクルクルと化けようとしているのでした。
しかし、与一にとっては、どうにも歯痒く、いつの間にか拳を握り、一生懸命狐を応援していたのでした。
「どうにも要領の悪い狐だ。頑張れ。頑張れ。」
いつしか、寒さで肩がすぼまって、二の腕が体を自然に抱き始めていましたが、それでも与一は、狐から目が離せませんでした。
何故かは解らないまでも、心をつき動かせる何かが
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