すすき野原で見た狐/板谷みきょう
「神様、仏様、生きとし生ける者すべてのいのちが、あなたのお望みに叶いますよう、何卒、何卒。そしていつか報われますように、誠に、誠に。おん願い、申し上げ奉ります。」
日が昇ると、お天道様に向かって手を合わせ、そうして与一は、おもむろに社の回りに作ったジャガタラ畑の世話を始めます。
そして気が変わると、野山に咲いた花や木を見たり、畑仕事をしている村人の姿を眺めたりして、過ごしておりました。
与一の面倒は、村の者みんなが、それぞれに見てやる様になりましたが、それが、そもそも当たり前の様に、いたってのん気に暮らしておりました。
「神さまでも、仏さんでも鰯の頭でも、信心というものが、有り
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