すすき野原で見た狐/板谷みきょう
有り難いもんなんだ。あのジャガタラも、いつか実を結び暮らしの救いに、つながるに違いないんだ。」
与一は、ジャガタラ畑の世話を終えると畑仕事をしている村人達にそう言っては、その日一日の食べ物やらをめぐんでもらい、施しを受けているのでありました。
そんな有り様を見て村の者たちは、だんだんと与一のことを、怠け者の変わり者として、誰も相手にしなくなっていったのでした。
季節は移り変わり、村人達の畑でも僅かながら実りがありました。しかし、社の辺り一面に花が咲き乱れ、その花が散るころになっても、ジャガタラの実のなる気配はありませんでした。
「何故だ……。何故なんだ。どうしてジャガタラは、実を結
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