すすき野原で見た狐/板谷みきょう
 
ていく坂道を、疲れた様に重い足取りで、汗を流し、息をハアハアさせながら荷車を引いて、それでも歩いておりました。
行き先は、生まれ故郷の貧しい村でありました。その村は、平地のない山の斜面に、すすき野原に囲まれてポツンと小さくありました。

 男の姿を最初に見付けたのは、一匹の狐でありました。
 「おやっ。めずらしい事もござっしゃる。村を出て行く者は、今までにも、たあんと、見掛けたことがあるが、村を訪れる者がござっしゃるとは……。それにしても、なんて変てこな格好をしてござっしゃろう。汗だくで引いている荷のなかみは一体、何なんじゃろう……。残念なことに。とんと、見当もつかん。」
 狐は、すすき
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